xDSL技術情報

このページには、xDSL (Digital Subscriber Line) 技術に関するさまざまな情報を掲載していきたいと思っています。随時更新していく予定ですので、ぜひご覧下さい。また、私は専門家ではありませんので、誤記などを発見した際にはメールでご連絡いただければ幸いです。

INDEX

- xDSLいろいろ
- ADSLとは?

- 自宅からNTT回線収容局までの距離の測り方
- ACCA距離測定サービスを使った測定例


xDSLいろいろ

xDSLとは、DSLと呼ばれる技術の総称で、ADSLもこの中に含まれます。ADSLが消費者向けに選ばれ普及してきたのは、一般消費者に必要とされるダウンロード速度が速いのと、コスト面で他のDSLよりも有利だったからです。以下の表に現在利用中または開発中のDSLをリストアップしておきます。速度や距離はおおよその最大値ですが、xDSL全般において※COからの距離(回線長)が大きくなればなるほど伝送効率に減衰が生じ、速度が低下します。また、距離や速度に関しては原則的に北米規格を標準としていますので、日本では事情が多少異なってくる可能性があります。参考程度に思っておいて下さい。

※CO = Central Office (回線収容局)

世界標準規格(ITU-T勧告)
名称
最大速度
距離
特徴
ADSL
A
symmetric
640Kbps
5.4Km
G.dmt フルレートADSL(正式名称G922.1)。ダウンロードスピードは事項のUADSLより断然速く有利である反面、距離による減衰が激しい。低コストで導入できるため、最も普及しているDSLの一つ。要宅内スプリッタ。代表的な業者としては、東京めたりっく通信Familyサービスが挙げられる。
9Mbps

UADSL
U
niversal

512Kbps
5.4Km
G.lite ハーフレートADSL(正式名称G922.2/Splitterless ADSL)。スプリッタを必要とせず、フィルタのみで運用可能。日本では最も普及しているが、最近は速度面で有利なG.dmtが好まれる傾向にある。G.liteの代表的な業者として、NTTのフレッツADSLが挙げられる。
1.5Mbps
HDSL
H
igh-bit-rate
1.5/2Mbps
3.6Km
2対4線を必要とし、世界中のディジタル専用線の基盤として利用されている。T1(1544Kbps)では2対4線、E1(2048Kbps)では3対6線を必要とするが、リピーターなしで比較的長距離の伝送を可能にする。
1.5/2Mbps

G.shdsl
or
SHDSL
S
ingle-pair

2.3Mbps
6Km
SHDSLという名称が示す通り、SDSL/HDSLの利点を組合わせたDSL技術。G.shdslは規格名で、2001年の初頭にITUで標準化が完了したばかりの新しい規格。特徴としては、制限距離が大幅に緩和され、またHDSLと違い1対(2線)の回線しか必要としないため、伝統的なT1/E1/J1に取って代わるアクセス回線として注目を浴びている。
2.3Mbps
VDSL
V
ery-high-bit-rate
2.3Mbps
1.4Km
基幹に光ファイバーを使い、ラストワンマイルをメタルで繋ぐDSL技術。日本におけるFTTHは2001年に入りサービスインを開始しているが、全ての家庭に光ファイバーを引き込むことは非現実的であるという認識から、既存のメタル回線を一部利用するVDSLが有望視されている。最大速度である52Mbpsを可能にするには、COより300m以内という厳しい制限があるが、13Mbpsまでの速度制限を考慮すれば、1.4Kmまで延長可能。10Mbps程度の上下対称も可能。NTTのBフレッツや、有線ブロードネットワークス100Mbps光サービスが挙げられる。
52Mbps


ITU-T DSL関連 Series G Recommendations(2001年9月現在) - 重要と思われる規格のみ抜粋

規格名
標準化時期
解説
G.991.1
1998-10
High bit rate Digital Subscriber Line (HDSL) transceivers
G.991.2
2001-01
Single-Pair High-Speed Digital Subscriber Line (SHDSL) transceivers
G.992.1
1999-07
Asymmetrical digital subscriber line (ADSL) transceivers
G.992.2
1999-07
Splitterless asymmetric digital subscriber line (ADSL) transceivers

特殊規格(ベンダー規格など)
名称
最大速度
距離
特徴

SDSL
Symmetric

1.5/2Mbps
3.6Km
上下対称の速度を実現するDSL。北米では企業向けのDSLとして最もスタンダードな規格だが、日本を含める他国ではあまり普及していない。東京めたりっく通信は早くからSDSLサービスを提供している。本来はHDSL-2と同義であるが、SDSLはベンダーごとに細かい仕様を定めて導入されるサービス規格の総称である。別名Single-pair DSL
1.5/2Mbps
IDSL
I
SDN
144Kbps
5.4Km
ISDN(BRI)技術を用いるDSL。通常のISDN(2B+D)と違い、1chで144Kbpsであることと、専用線扱い(定額)であることがISDNとは異なる点である。他のDSLと比較して速度面で不利なため、あまり普及していない。IDSLでは通常のISDNに使われるTAなどの機器をそのまま流用することができる。
144Kbps
HDSL-2
H
igh-bit-rate
2nd Generation
1.5/2Mbps
3.6Km
1対2線のみでT1/E1と同等のサービスを提供する技術。HDSL同様リピーターいらずであるが、先述のG.shdslが標準化されるまでの繋ぎとしての意味合いが強い規格である。SDSLと同義に扱われる場合もある。
1.5/2Mbps
RADSL
R
ate-adaptive
1Mbps
5.4Km
Westell社により開発されたADSLの派生規格。回線状況に応じてダイナミックに転送レートを変更させることが可能。また、業者の設定によっては上下対称にも非対称にもすることができる。
2.2Mbps
MDSL
M
ulti-rate

100Kbps

6.6Km
ADSLを簡易化しつつコストを抑えるべく開発された技術。データ減衰を抑えならがもADSLと比較して長距離伝送を可能にしている。
1Mbps
MSDSL
M
ulti-rate
2Mbps
15Km
双方向対称速度を実現し、長距離伝送に適す。SDSLの弱点を克服し、音声通信も統合可能。しかし最長距離では速度が128Kbpsまで低下する。
2Mbps
CDSL
C
onsumer
320Kbps
5.4Km
Rockwell社により開発され商標化されたDSL技術。独自の転送技術(非DMT/CAP)を用い、スプリッタレスを実現し、コスト面で優位。
1Mbps
UDSL
U
nidirectional
N/A
不明
ヨーロッパにて標準化が行われている段階なので詳細は不明。名称の通り一方通行の通信のみ可能。転送速度は不明だが、HDSL相当だと思われる。
1.5/2Mbps
ReachDSL 768Kbps
9Km
Extended Reach DSLとも呼ぶ。1999年12月にParadyne Networks社が発表したDSL技術。正式には、Hotwire MVL (Multiple Virtual Lines) technology。他のDSL技術と比較して、長距離に渡る通信に優れており、4Kmを超える地点でも768Kbpsという速度を保つことができる(ADSLではほとんど速度は出ない)。独自のモデムとDSLAMは2001年7月にはJATE認証を受けている。160KHz以下という低い帯域を使い減衰を抑える反面、速度面では不利。MVL技術では、変則的に上下速度が合計で768Kbpsになるが、この範囲内で通信速度を自在に変化させることができる。COからの距離が遠いユーザーへの救済策として期待されている。Yahoo!BBが採用を表明
768Kbps
10BaseS
Ethernet over VDSL
13Mbps 1.2Km 2001年7月に日本Infineon社が発表したEthernet over VDSL。DSLでは既存の電話線にATM技術を載せることで高速通信を実現するが、10BaseSではこの部分にEthernetを用いる。上下対称の場合は13Mbps、非対称では下り22Mbps/上り3Mbps程度の転送速度を提供できる。通信方式はFDM方式
13Mbps


ADSLとは?

ADSL (Asymmetric Digital Subscriber Line)とは、上述のように、一般家庭向けとしては世界で最も普及が進んでいるDSL規格です。通信速度は公衆網を利用した既存の規格と比べ高速で、最大で8Mbps程度のダウンロード速度を実現します。

背景
ADSLの歴史は以外と古く、1987年まで遡ります。Bellcore研究所(現Telcordia Technologies社)のJoseph W. Lechleider氏が率先して提唱したDSL技術です。本来はVODVideo On Demand)を実現するために模索された通信技術であり、同時期に現在でも現役の名門スタンフォード大教授・John M. Cioffiによって生み出されたDMT(Discrete MultiTone)と呼ばれる伝送方式を利用して、一般消費者により必要とされる下り速度に重点を置くことで、下り最大8Mbps、上り1Mbpsという高速通信を可能にしつつ、既存の電話網との互換性を保つことに成功しています。蛇足ですが、DMT方式はもともと下り(消費者方向)に特化した通信を目指して開発された技術なので、偶然とも必然的とも言える一致でADSLには正に最適な伝送方式だったということです。

技術:
データ通信というのは、基本的に高周波であればあるほど高速な通信が可能になりますが、ADSLもこの原則に漏れず、既存の電話線で高周波帯域を使用することにより高速通信を実現しています。具体的には、G.dmtでは34kHz〜1104kHz、G.liteでは〜548kHzまでの周波数帯を使っています。このように音声通信との干渉を避けるため、低周波帯域をリザーブ(使用しない)ことにより、0〜4kHz帯のアナログ音声通信(通常の電話)との共存を図っています。しかし、ディジタル音声通信を行うISDNでは、〜320kHzという周波数帯を使用する(日本仕様)ため、ADSLとの干渉(クロストーク)が顕著に起こります(ISDNに関しては後述)。


参照図: 住友電気工業ネットワークシステム事業部より抜粋

先述のDMT方式(詳細は後述)では60Kbpsシグナルを同時に256個のキャリアで飛ばすので、ADSLの理論的な最大速度は15Mbps(60Kbps x 256)ですが、これはあくまで理論上の話であり、現実的には8Mbps程度が限界となります。DMTはもう一つの伝送方式であるCAP(Carrierless Amplitude and Phase)方式と比較してメリットデ・メリットはあるものの、ANSI(American National Standards Institute - 日本のJISのような機関)や先述のITU-T(International Telecommunication Union - Telecommunication Standardization Sector)により既に標準化されているのが強みです。なお、G.liteでDMTを使った場合、キャリア数を半分以下に削減した上で、ビットレートを間引きするために1.5Mbpsに制限されます。

可用性:
ADSLは1997年頃から北米の都市部でサービスインを開始し、現在ではアジア・ヨーロッパを含め広く普及しています。韓国や台湾などアジア諸国の中で、日本だけは独自の通信事情によりADSLの普及が遅れていましたが、2001年に入り爆発的な展開を見せています。総務省DSL普及状況公開ページによると、2000年12月には10,000にも満たなかったADSL加入者数が、2001年9月現在で総加入者数約510,000世帯という報告がされています。

ADSLを使うメリット:
ADSLではスプリッタ/フィルタにより通常の電話との干渉はない、というのは前述の通りです。ここでいう干渉とは電気的なものだけではなく、物理的な干渉も指します。通信速度以外の点では一般的に認識度が低い点だと思いますが、ここで生まれるADSLのメリットがあります。つまりADSLを導入しても、既存の電話線(銅線)を電話機に対してそのまま使えるのです。一般音声通信はCOより電力供給を受けて稼働しますが、ISDNの場合特殊なケーブルを利用した上でTAを介して電話機に繋がるという仕組み上、TAの電源が落ちた場合、それはそのまま音声通信への障害に繋がることになります。ADSLではこの心配は全くありません。もちろん、ADSLモデムの電力が落ちた場合、データ通信は不可能になりますが、COの電力が落ちない限り電話は使えます。


DMT方式について:(今はサービスを停止している「通信用語集」(NEC光ネットワークシステム本部)から抜粋)
DMT(Discrete MultiTone)方式はAmati Communications社(Westell Technologies社に最近買収されました)で開発された通信方式です。256の搬送波(一つの搬送波の帯域は4kHz)を立て、それぞれの搬送波にはQAM変調が加えられます。一本の搬送波の伝送速度はそれ程高速ではありませんが、多数の搬送波を同時に用いることにより高速の通信を実現します。DMTはCAPと同じくxDSLの変調方式として用いられています。

多数の搬送波を用いるマルチキャリア方式のメリットとしては、CAPなどの単一搬送波の方式に比べて外来雑音に強いことがあげられています。CAPでは外来雑音が識閾値を超えるとまったく使えなくなるのに対し、DMTではノイズのかぶっている搬送波だけを使わないことで悪い条件下でも通信を維持できます。xDSLの信号が通る加入者線にはさまざまなノイズが飛来します。ノイズに強いマルチキャリアを利用したDMTは有力な方式と考えられています。


参照図: 住友電気工業ネットワークシステム事業部より抜粋

※DMT方式に関しては、こちらも参考にして下さい(VDSLにおけるDMT


自宅からNTT回線収容局までの距離の測り方

ADSLはNTTから回線収容局までの回線距離(実際は回線長)によって速度が上下するということは周知の事実ですが、ではいったいどのようにしてご自分の宅から回線局までの距離を計測するのでしょうか?

答え: 一般ユーザーおよび一般企業には、確実に知る方法は存在しません
次項ACCAのサービスを利用した直線距離の測定を紹介しています。

と、これではこのページの意義がないのですね(^^; では、NTT東日本にある「コロケーション及びDSL回線に関する情報」によると、「収容局の情報」というページに各収容局の住所に関する情報が開示されているようです。しかし、この情報(その他いくつかの情報も)はNTTと業務契約を締結している業者のための情報であり、一般公開はされていません。

しかし、局の名称さえ分かれば、通常の地図やMapionなどのオンライン地図を利用すれば、かなり近い直線距離は求めることができます。Mapionを使った例では、まずは1:3000モードで自分の住所を入力し、地図上での位置を掴みます。出てきた地図を隅から隅まで確認し(地図は拡大/移動できます)、NTTという文字を探します。

凡例: 東京都世田谷区南烏山近辺のNTT局(もちろん、私の住所ではないですので悪しからず(^^;)

NTT南烏山局

上記の地図から、NTT局の大体の住所が判明します(MapionではNTTと印していない場合があるのでご注意を)。これで自宅住所から局住所へのおおよその距離が分かるはずです。

MapionでNTTが見つからない場合、適当な地図を書店で求め、自宅周辺にNTTのロゴマーク()がないか探してみて下さい。私は1:37500ぐらいの地図を使いましたが、この程度の縮尺でもオンライン地図に比べると情報量が多いので、大丈夫だと思います。なお、私の自宅から局までの直線距離は1.5Km程度でした。間に回線敷設に障害物となる河川や線路も特にない(地下鉄はあります)ので、回線長は余裕を見ても2Km以内でしょう。つまり、東京めたりっく通信の回線で1.6Mbpsフルで出ているのは距離が近めである、という理由も考えられます。

※NTTロゴマークはNTTの商標です


ACCA距離測定サービスを使った測定例

ACCA局間距離判定サービスを開始しました。前述の視覚的測定法とは違い、かなりの精度で測定してくれるはずです。この結果は地図を使った目測での測定と一致しました。ただし、あくまで局から設置地への直線距離の測定ですので、実際の回線長は基本的に測定値より長くなると思って下さい。どの程度上乗せになるかはそれぞれの環境によって異なるので、詳細な測定は不可能です。しかし、1.5Mbpsか8Mbpsかという観点ではなく、広くブロードバンドサービス(ADSL/CATV/FTTH/FWA)を選択する際の指標にはなるかと思います。

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